第2章 脱獄者
「はぁ、はぁ…っ…」
コクリアを抜けて、ただ走ってきた。
ただ遠くに、あの足音が近付かない内に___。
「リオっしっかりして…あとで肉持ってきてあげるから」
「…ん、大丈夫だよ、すぐ治る」
天蓋に向かう時に僕は腹に一撃、
クインケの攻撃をくらってしまった。
重い怪我でも無いが、移動するには少し痛んだ。
この程度なら喰種の治癒力で治るが、
肉を喰わない事には時間がかかる。
「(…お腹すいた)」
そういえば、コクリアでは少しだが
食事が出てきたのには驚いた。
満足と言える量では無かったが、味も普通だったし
聞いていた監獄とは違っていた。
「とりあえず隠れられるところを探そう…柚葉?」
柚葉が立ち止まり後ろの暗闇を見つめたまま、
返事をしない。
「柚葉?」
再度読んでみるも、振り返ってはくれない。
______カツン。
「…リオ、」
柚葉の震え混じりの声。
____カツン、カツン。
人気のない路地によく響く、義足の音。
柚葉がじっと見つめていた暗闇の先、
何度も目にしたシルエット。
「ツヒヒヒ…見つけたよ、リオ」