第8章 お茶をどうぞ、お嬢様〜執事松〜
気を失ったイヤミを放置し、砕け散った壺の亡骸を拾い集め私は狼狽する。
「ひどい…!おそ松、あなたは…あなたって人はなんてことを!!」
「だはははっ!悪りぃ悪りぃ本気出しちゃった〜」
こんな事しでかしておいて、なんでコイツはヘラヘラ笑っていられるのか。
破片を掻き集めていると、おそ松が屈んで私の手を掴んだ。
「触ったら危ないって」
「余計なお世話です」
掴まれた手を振りほどき立ち上がる。
拳を握り締め凶暴な視線を注ぐと、おそ松は私の肩に腕を回しニーーッと笑いかけてきた。
「なに可愛い顔して怒ってんの?べつにいーじゃん?壺なんか」
「これはただの壺じゃありません!この世にたった1つの大切な壺なの!」
「お嬢様だって1人しかいねーじゃん?」
「この壺は数千万円の価値があるんです!私と比べないでよ!」
2人の口論はヒートアップする。
「危うく攫われかけてたんだぜ?壺1つでお嬢様の処女を護れたんだから安いもんだろ!てかこんなよく分かんねー壺より俺は主様の方が大事だし!」
「よくわかんねー壺じゃありません!○ポレオンズの国宝級の壺です!あと処女とかデリカシーないこと大声で言わないでよ!!」
「んだよそれ!人に助けてもらって礼も言わねーで怒ってばっか!」
「助け方がひどすぎる!これならスワンボート漕いでた方がマシでした!」
「ダメだ!」
「なんでよ!」
「お嬢様は俺のだから!」
「え?」
「誰にも触らせたくねーんだよ!ホントは…弟達にだって!」
その言葉は、一瞬にして私の心の扉を蹴り飛ばした。