第12章 ※くすり〜トド松〜
一松兄さんには悪いけど、優先順位は主ちゃんがダントツ1位なんだよね。
「ごっめーん、ボク用事できちゃった!パチンコはまた今度」
両手を合わせて可愛く謝る。
「は?待たせないように急いだのに」
「ごめんってば。またこの次にっ」
「いやおかしいよね?誘ったのお前だよね?渋ってたおれの心を動かしたのもお前だよね?お前の都合でおれを振り回すの?毎日衣食住共にする兄弟だからこそ人としてのマナーを守らないとだよね?」
うわぁ陰気…。そういえば根に持つタイプだった。呪い殺されるかもしれない。
でも今のボクはそれどころじゃない。なんてったって主ちゃんとタピオカをモッチモチのトゥルントゥルンなんだから。
「もーそんなネチネチ言わないでよ。今度埋め合わせするから。じゃーねっ♪」
「おいっ!ちょっ」
ウインクを飛ばして玄関の引き戸を閉めた。
一松兄さんには後で猫缶でも買い与えておけばいいや。
うん、トッティ気が利いて優しい!トッティだーいすき!
・・・
「…せ、切ない…」
相変わらず心がない弟に、一松のガラスハートは今にも壊れそう。
一松はふと考える。
自分はなんでこんなにも胸が苦しいのか。
この苦しさはもしや…?
「ないないないないっ!あいつを単なる好意以上の特別な感情で見てるとかないっ!ぜっっったいない!」
でも、ちょっと前までトド松を見るだけでドキドキして胸が弾んでいたような?
「ありえなぁぁぁぁぁいっ!!」
ぶんぶん頭を振る。
(考えてみろ?あんな自己愛強くてあざといだけの冷酷非道野郎好きになるわけない!そうだ猫だ。こんな時は猫を見て心を落ち着——)
——ぎゅるるる、とお腹が鳴り、ハッと我に帰る。
苦しみは恋ではなく腹痛からくるものだった。
「なんだ……よかった」
お腹を押さえながら、再びトイレに駆け込む一松なのだった。
——ありがとうございました!——