第6章 さよなら14番〜カラ松〜
もう30分は経ったかな…。
「なんたる親不孝行ボーイなんだじゅうよんばあぁぁあんっ!!マミーのバースデーを祝うために己の刑期を延ばしてどうするんだぁぁあ!!」
「あの、もう帰っていいですか?」
私は感極まって泣きじゃくる松野看守をしばらくは宥めていたが、睡魔に襲われもう限界が近づいていた。時計を見やれば、ついに短い針が日をまたいでしまった。
毎日6時起きだというのに。いい加減もう解放されたい。
返事が無いので立ち上がると、松野看守は机に突っ伏したまま私の手錠を引っ張った。顔を上げたその表情は、それまでの泣き顔とは一変し、ギロリと私を睨みつけている。
「答えはノーだ」
そのまま身体を引き寄せられ、吐息がかかるくらい顔が近づく。こんなに至近距離で見つめ合うのは初めてだった。
「あ、あの…看守っ!?」
「15番よ。何故オレの許可なく席を立った?」
「もう尋問は終わったかと…」
「それは君が決めることじゃない。オレの仕事だ」
松野看守は乱暴に席を立つと、「こっちへ来い」と手錠を引き、看守室の奥——いわゆる"お仕置き部屋"まで私を連れて行った。
初めて入ったお仕置き部屋の中は、中心に椅子が1脚置かれているだけだった。私はされるがまま椅子に座らされると、松野看守が耳元に口を寄せ低い声で囁く。
「…15番。オレはただ、むやみやたらに君を疑った訳じゃあない。分かるな?」