第5章 眠れぬ夜に〜一松〜
「そして、木こりが切り刻んだソレを袋に詰めて立ち上がると、背後から…」
「やめてってば!余計眠れなくなるから!」
両耳を手で押さえて必死に抵抗する。
すると、一松の声が止まった。
「……」
(怖がってるのを見てやめてくれたのかな?)
なんだかんだ言って、やっぱり一松は優しいよね。
そう思い、耳から手を離すと、
「うぇあぉぉおぉぉおおお!!…と、切り刻んだ筈のそいつが襲いかかって…」
見計らったように、眼前でおどろおどろしい声を上げた。
「……」
「え…?今の、けっこう怖くない?」
「いや、なんとなく脅かしてくるだろうなって予想できた」
「…じゃあ、違うパターンもあるから、もう一回…」
「いいです」ときっぱり断ったら、「あっそ」と呟き拗ねだしてしまった。
口を閉ざし、くるりと身体の向きを変えて天井を仰いでいる。
「ご、ごめん一松。怖かった。すごく怖かったよ?」
「…いや、気ぃ使われると、逆に精神的ダメージ負うから……逆に」
「気を使ったわけじゃないけど、なんか、ごめん…」
私も真似して視線を上にし、真っ暗闇を眺めた。
真っ暗闇といっても、カーテンの隙間から月明かりが漏れ、一松の横顔をぼんやりと照らしている。
「で…どう?」
「なにが?」
「だ、だからっ……寝れそう?」
一松は視線を天井に向けたまま、腕枕している腕でぎこちなく私を抱き寄せる。
「…ううん、まだ」
距離が縮まり、吐息がかかるくらい顔が近づく。
私は、一松の首筋に頭を擦り寄せた。不器用な彼に、もっともっと甘えたくなった。
——と、突然、耳たぶを指が優しくなぞる。
「……っ」
指はそのまま首筋、鎖骨を這い回る。
触れられた肌に熱がこもり、きゅっと唇を噛みしめる。
「ねぇ、急に…どう、したの?」
「それはこっちの台詞なんだけど。……そっちこそ、何感じちゃってんの?」
一松は、意地悪な笑みを向けながら、指で悪戯に胸の頂をピンと弾いた。