第5章 眠れぬ夜に〜一松〜
私は、俗に言う「不眠症」だ。
ストレスを溜め込むと、どんなに疲れても寝不足でも、夜になれば目が冴えて眠りにつくことが出来なくなる。
その為、日中は強い眠気に襲われ、仕事に支障をきたし、またそれがストレスとなって眠れなくなるの悪循環。
勘が働くのか何なのか。
私が辛くなって自暴自棄になりかけた時、いつも一松は家に来る。
今日も仕事でミスを連発してしまい、半べそかいて家に帰ったら、膝を抱えた一松がソファーに座っていたのだった。
「一松とこうしてると、なんか落ち着く」
「……へーぇ、物好きだね」
「なにそれ?もっとさ、『俺もだぜ、ハニー!』とか言えないの?」
「はぁっ!?ば、馬鹿でクソだろ!そんなん言う奴!」
冗談を言っただけなのに、物凄く狼狽えている…。
「ねぇねぇじゃあさ、眠れるようになんかお話聞かせて」
「…クズの豆知識とか?」
「あの、出来れば童話とかがいいなぁ」
そう言うと、舌打ちが聞こえ、ボソボソと寝物語が始まった。
「むかぁしむかし、クソな木こりがザクリ、グチャリと、木では無いナニかを滅茶苦茶に切り刻んでいました…」
「やっぱいい」
この人にこんなことをお願いするんじゃなかったとすぐ後悔し、くるんと背中を向けたものの、肩を掴まれ向かい合うように抱っこされた。