第4章 松奥〜F6十四松〜
十四松様はうなじに口づけながら、わたしを纏う生絹の衣を蛹が羽化するがごとく肌を露わにしていく。
「綺麗。主」
優しく囁かれれば、心が打ち震える。
唇が、わたしの首筋に朱の証をつけていく。
「…っ」
眉根を寄せると、十四松様は肩にかかったわたしの髪にその美しいお顔をうずめた。
「いい匂い。いつもと違うね…?」
そう言って顔をあげ、わたしの目をサファイアが覗き込む。
「西洋の植物を配合した香油です」
今夜は、奥女中の間で流行っている香油を髪につけていた。
よかった。お気に召したようだ。
「十四松様に喜んで頂きたくて」
「うん。喜んでるよ。またつけて?」
「ふふっ、分かりました」
見つめ合い笑顔が並ぶと、肩を押されて布団に寝かされる。
「ん…っ」
熱い舌がわたしの口内にねじ込まれる。息をする間もない程に狂おしく口づけられ、十四松様に溺れていく…。