第4章 松奥〜F6十四松〜
「やぁ、お姫様」
上様のおなーりーー…である。
湯浴みを終え、白の長襦袢に身を包んだわたしは、寝具の横で正座をし、寝所に見えた上様を見あげた。
視線を交えると、宝石のような碧眼が優しく細められる。
「お待ちしてました」
手を揃え、頭を畳みにつけようとすると、上様はかがんでわたしをおもむろに腕の中へ閉じ込めた。
「あ、あの…!」
「そういう堅っ苦しいのは無しにしようって言ったでしょ?ぼく、今夜は余裕無いんだ」
そう言うと、胸に顔をうずめて子供のように甘えだす。
「……大分お疲れなんですね」
「うん、だから早く主と過ごしたかった」
「あ…」
上様がハラリと寝衣の帯を解くと、鍛え上げられた逞しくも美しいお姿が露わになった。
「見てこの筋肉!今日腹筋五百回頑張ったんだ!」
「まぁ!凄いですね!」
褒めたのに、上様は口惜しそうな表情になる。
「カラ松兄さんと回数競い合ったらさ、あと三回ってとこで力尽きちゃってさ。悔しかったなぁ」
「もしかして、それでご機嫌を損ねてるんですか?」
「うん。明日は絶対勝つ!」
「はい、頑張ってくださいね」
無邪気な上様のお顔に思わずクスリと笑みが零れる。
「あ!主が笑った!やったぁ!」
「ふふっ、愛らしくて、つい」
「スマイルも無事貰えたし、早くセクロスしよっ?あ、いつものしたいからこれ巻いてね?」
「分かりました」
立ち上がり、手渡された長い帯を腰に巻く。
「いっくぞーー!!そーーれっ!!」
「あーーれーーー!!」
「あっはははは!女体スパイラル!!」
はい、定番のアレです。
巻いた帯を引っ張られ、くるくると駒のように舞うわたし。そう、これは二人のお約束の遊戯なのだ。
回り回ってふらつくわたしの腰を、上様が力強く抱き寄せた。
「主、いただきます」
柔らかな音を立てて、わたしのうなじにキスを落とす。
「あ…あぁっ、上様…っ」
「十四松って呼んで」
頭の中はまだぐるぐると目眩がするけれど、甘い刺激が首筋から広がっていくのを感じ、わたしは十四松様に身体をひしと寄せた。