第12章 ※くすり〜トド松〜
案の定、仮病をやめた十四松兄さん達が追いかけてきた。人混みの中をすり抜け改札を目指す。
「あっ」
ヒールで無理をさせちゃったせいか、主ちゃんの脚がガクンと落ちた。
「大丈夫!?」
「ぁ…立てない、どうしよう、力が入んない」
「落ち着いて。深く息を吸ってごらん」
パニックに陥りかけていた主ちゃんに優しく言うと、素直に深く息を吸い、ゆっくりと吐いた。
主ちゃんが冷静さを取り戻したのを確認し、来た道に視線を戻せば、兄さん達が着々と距離を詰めてきているのが見える。
万が一のことがあって怪我でもさせたら大変だ。
ここは一旦——
「ボクが時間を稼ぐ。改札の向こうへ走って!」
「え!?は、はいっ!」
「後で合流しよう!」
コクリと頷く主ちゃんの肩を押し、改札へと送り出す。
ひとまず主ちゃんの安全は確保出来た。次はボクの番だ。
反対側の出口に向かえば兄さん達を巻けるはず。遠回りだけど仕方がない。
「トッティー!」
十四松兄さんの声が迫ってきたタイミングで踵を返し、タックルを回避する。
「おい待てよ!」
歩道を横1列に並ぶハタ迷惑なJK5人を壁にし、チョロ松兄さんを遠ざける。
「ははっ!ケツをごしるだけがボクじゃないんだよ!」
踏切を渡り、反対の駅前広場へ。
あと一歩、あと一歩で改札にとど——
「甘いね」
——かなかった。
壁から飛びかかってきた一松兄さんを視覚が捉えた時には、ボクは既に地面に倒されていた。
「はい…ゲームオーバー…」
「あ"ぁぁぁぁぁぁ!!」
捕獲され、一松兄さんに両脚をズルズルと引き摺られる。
『やっぱりごめん、今日は行けない』
最後の力を振り絞り送った1文。
主ちゃん。
サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ。
・・・