第12章 ※くすり〜トド松〜
主ちゃんが飲み込んだのを確認し、瞳をまっすぐ見つめる。きっと今、トッティ成分が体内で吸収され、頭の中はボクいっぱいになっているはず…!
「行こう!兄さん達は冗談でああ言ってるだけだからさ」
ニコリと微笑みかける。
けれど、主ちゃんは首を横に振った。
「今日はほんとにいいよ。買い物して帰るし気にしないで」
気にするから!兄の束縛激しくてデートキャンセルとかありえないから!
あれ?てか効き目は?
「ボクも買い物したかったし一緒に行こうよ!」
そう言ってもすぐには返答せず、主ちゃんは困ったように笑う。
思っていたのと違うな。薬が効いているなら、もっと兄さん達みたいにがっついてきてもいいはずなのに。
「1人で行くよ」
「ボクも行くって!忙しくて今日くらいしか出かけられないんだよね」
「そ、そう?じゃあ…」
ようやく主ちゃんの気持ちが傾きかけたその時だった。
「ボゥエッ!ボゥエボゥエッ!!」
「十四松!どうした十四まぁぁつ!!」
茶番が始まった。
苦しげに膝をつく十四松兄さんの肩を、一松兄さんが支えている。
「大変だぁ、十四松が原因不明の発作にぃ」
ボクをガン見しながらセリフ口調で話すチョロ松兄さん。
「もうダメぼく死ーぬー!」
「死ぬな十四松!おれ達6つ子は6人6色のクズ!1人でも欠けたらクズのバランスが崩れる!」
一松兄さん、迫真の演技だけどクズのバランスってなに?
「よし、とりあえず家に連れて行こう」
「でもおれら2人だけじゃ運べない」
こっち見んなし!仮病バレバレなんだよ!
「トド松くん、黄色いお兄さん具合悪そうだよ?目の焦点が合ってないしずっと口開きっぱなしだし…」
「ごめんそれ平常運転」
「平常運転ってな……きゃっ!」
不安げな主ちゃんの手を何も言わずに引いて走り出す。
めんどくさ。
もう兄さん達には付き合ってらんないよ。
いつもそうだ。そうやってボクの邪魔をする。
まぁ……今回は自分が蒔いた種だけど。