第12章 ※くすり〜トド松〜
主ちゃんは引きつった笑顔を作りながら後退る。
「き、今日はお兄さん達に悪いから帰ろうかな」
「いやいやいや!せっかく来てくれたのにそれはダメだよ!行こう!」
「でもみんなすごく怒ってない?ほら」
そう言われ兄さん達を見やると、隙あらば殺すと言わんばかりの形相で睨みをきかせている。
「ね?今日は私帰るよ。ごめんね」
「ちょっと待ってよ!」
焦りから強く呼び止めてしまう。また印象マイナスだ。
この状況を打破する為にはアレしかない。残された可能性にボクはかける。
惚れ薬を入れていたフレスクのケースを取り出す。
「主ちゃん、これあげる」
「え?いきなり何?」
「兄さん達と騒いじゃったお詫び。はい」
主ちゃんの手のひらにハートの"ラムネ"を乗せる。それは、たった1つのボクの希望。
「ありがとう?」
主ちゃんは少し戸惑いながらも薬を口に放り込んだ。
「ん、ピーチ味かな?美味しいね」
1粒だから効果はたった1日。それでもいい。
効き目があるうちにときめきを本物にすればいいんだ。