第12章 ※くすり〜トド松〜
「何してんの?カツアゲ?」
ポケットに手を突っ込み、一松兄さんがチョロ松兄さんに話しかけている。
「違うよ。日常会話してたらいきなりこいつがしゃがんだんだよ」
「へぇ」
一松兄さんと目が合うと、手を差し伸べてきた。
「ありがと…う?」
こんな事するキャラだっけ?と思いつつも手を伸ばせば、掴もうとした手が3本に増えている。
「ちょっと…なに?おれが1番最初なんだけど」
「いや、助けたいと思う気持ちに順番なんて関係なくない?」
「ぼくの袖長いから掴まって!」
3人が睨み合いながらバチバチと火花を散らす。
(あぁ…もう手遅れか…)
この流れで全てを察した。これは全員ボクに惚れている。
押入れに隠したのが誤算だった。なんで肌身離さず持ち歩かなかったボクよ。
つーか1粒残すくらいなら全部食えよ。僅かでも残せばバレないとでも思ったのかよ。
「ほんっと、女子みたいでほっとけないんだから。さぁ僕の手を取って」
照れながらチョロ松兄さん。
「トッティが選ぶのはぼくだよ!」
真っ直ぐな瞳の十四松兄さん。
「はい…………ねこじゃらし」
「それはいらない」
笑顔で断ると、一松兄さんはあからさまに肩を落とした。
待ち合わせ時間は刻一刻と迫っている。
コイツらに構っている時間なんてない。