第12章 ※くすり〜トド松〜
「待て」
壁ドンが行く手を阻む。
カラ松兄さんはサングラスを外し、訴えかけるような瞳でボクを捉え、フッと細めた。
「ど、どいて」
当然その要求は受け入れられず、カラ松兄さんはかぶりを振ってボクの顔の横に両手をつく。
「ダメなんだ。己の気持ちに蓋をすればするほど思いは強くなり、もう、この胸が張り裂けそうだぁぁぁ!!」
ビリィィィ!!
コイツ、自ら張り裂けやがった!!
カラ松兄さんは引きちぎったタンクトップから乳首を覗かせ、獲物を捕らえたかのようにギラギラと見つめてくる。ハタから見れば完全に不審者だ。
「カラ松兄さん」
こうなったら好意を逆手に取ろう。
目に涙を浮かべ、ふるふると身体を震わせ懇願する。
「怖いよ。どうしたの?いつもの優しい兄さんに戻って?」
「ッ!?」
カラ松兄さんの動きが止まる。
「か…」
「か?」
「可愛い…すぎる、可愛すぎるぞトッティ!」
逆効果だった。けれど可愛くなくなるのは不可能だから、このまま突き進む。
「可愛くてもなんでも離してくれないと嫌いになるから!」
「ええっ!!きき、嫌いに!?」
途端に狼狽する。今度は効果てきめんだ。
「悪かった。オレはなんてことを…!」
怯んだ隙に壁ドンの呪縛から逃げる。
「ぁ…しまった!」
「ボクはカラ松兄さんが兄として!いい?兄として大好きだよ!バイバーイ!」
「ま、待てっ!トッティーー!!」
カラ松兄さんがボクを追いかけようとこっちを向いたタイミングで、運良く警官が通りがかり兄さんに声をかけた。
「半裸の不審者発見ダヨン。職質ダヨン」
「なっ!?オレは不審者じゃない!ただの無職童貞だ!」
「ますます怪しいヨン。いいからちょっとこっち来いヨン」
・・・