第12章 ※くすり〜トド松〜
「ねぇねぇ、そういえば来週の金曜ナイトショーさ、テレビ初放送のアレだって」
「おおっ、アレとは?」
(よし、食いついた)
これ以上詮索されたくないのでテレビの話題に切り替える。適当な相槌を打ってひたすら時間を稼ぐ。
「アレはえっと——なんだっけ?」
「もしやアニメ原作で実写化したアレか?」
「あぁ、うんうん。そうかも」
兄さんと話しながらもボクのハートは主ちゃんでいっぱいだ。
仲良くなれるかな?趣味とか何なんだろう。
今日はどんな服着てどんな髪型でどんなメイクでどんなシャンプー使ってどんな——なんて、チョロ松兄さんレベルで童貞拗らせてたら、車が前方からやって来るのが目に入った。
脇に寄ろうとしたその時、カラ松兄さんが突如謎の行動に移った。
「デンジャラァァァァァスッ!!!!」
庇うようにボクの前に立ち、車の真正面で両手を広げるカラ松兄さん。
「ワァァァァァ!!??」
ボクが驚き悲鳴を上げた刹那、クラクションが耳をつんざいた。
「危ないザンス!!気をつけろザンス!!」
出っ歯のドライバーはダミ声でそう吐き捨てると、排気ガスをボクらに浴びせ去って行った。