第12章 ※くすり〜トド松〜
「カリスマ兄さん!」
いつからそこにいたのか分からないけど、カラ松兄さんが腕を組み壁に寄りかかっていた。その双眸は鋭くおそ松兄さんを睨みつけている。
「離すんだおそ松。嫌がってるじゃないか」
「うぅ…怖かったよカリ松兄さぁん!」
「フッ、オレが来たからにはもう安心だ」
「んだよこれからだったのに!邪魔すんなし!」
声を張り上げた次の瞬間には、おそ松兄さんの腕はカラ松兄さんに捕らえられていた。
「よせと言ってるんだ!」
「チッ、つまんねー」
舌打ちし、不服そうにボクの上から降りていくゲス松。
ゲス松はよほど機嫌を損ねたのか「バーカバーカカラ松のバーカ!ニート!ウンコー!」と、一昔前の小学生のような悪口を言い残し1人で出かけて行った。
「ありがと♡カラ松にーさんっ」
お礼を言うと、カラ松兄さんは得意げに髪を掻き上げた。瞳を無駄に煌めかせ、相変わらずなイタイ笑顔。
「気にするな。ブラザーが困ってるならば助けるのがオレの役目!しかし、弟を襲うなんてどうしようもない長男だな」
惚れ薬のせいだけどそこは内緒にして話を合わせる。
「ほんとだよね!いくら女の子に相手にされないからってさ」
「あんなことされて気分が悪いだろう?気晴らしにパチンコでも行くか?」
「え?うーん…」
唇に指を当てて考える。
待ち合わせまでまだ時間あるし、デート資金集めに行こうかな?
あ、でも服がタバコ臭くなるのは嫌だから…
「やめとく。ボク今から薬局行きたいんだよね」
リップ使い切っちゃったから買っておかないと。
「そうか。ちょうどオレも薬局に用があったんだ。行くぞ」
「パチンコはいいの?」
「後で行く」
べつに1人でいいのに。
でも、カラ松兄さんと行動を共にするのはメリットがある。
またおそ松兄さんに奇襲される危険があるし、もしもの時の為に身代わり兼ボディーガードとして利用しない手はない。
「じゃあ一緒に行こっか」
というわけで、ボクはカラ松兄さんと家を出た。