第11章 リクエスト作品 ハニーに首ったけ〜カラ松〜
その後、幾度となく好機に恵まれるも、ハニーのドジっ子スキルが連発したり、横顔に見惚れて思考が停止したり、釣りに集中出来ず何度も魚を逃してしまった。
もう夕暮れ時。鯉釣りバトルは終盤を迎えようとしている。
1匹も釣れないオレは手持ち無沙汰に、横ではしゃぐ3人を眺めていた。皆疲れを知らないのか、会話を弾ませながら釣りを楽しんでいる。
「あ、逃げられちゃった」
「ドンマイ主ちゃん。でもこの短時間で随分成長したよねっ」
当然だ。なにせハニーには最高のコーチであるこのオレカラ松がついてるからな。
「えーーんやこーーらっ!」
威勢のいい掛け声と共に2つ目のバケツに魚を放す十四松。
「はーーっ、たのしーー!なんかボク勝負とかどーでもいーや。こーやっておしゃべりしてるだけでサイコー!」
「ぼくもー!釣り簡単で飽きたー!」
おいブラザー?それは当てつけか?1匹も釣れてないオレへの当てつけなのか?
ちらっとハニーのバケツに目をやる。3匹…か。頑張ってるじゃないか!
師を軽々と超えて行くハニーのポテンシャルの高さに胸が熱くなる。
一方のオレは、ラブレターや花束で魚に愛をしたためるも全く効果なし。フッ、鯉の恋煩いはどうやら重症なようだ——なんてシャレを言ってる精神的余裕などもうない。
どうやら、魚にオレの想いは届かなかったようだ。
あぁ。あと10分で100匹釣れるミラクルでも起きないだろうか?網でも投げたい気分だ。
だって…だって…
(主にカッコいいとこ見せたいぃぃぃぃ!!勝って喜ばせたいぃぃぃ!!すごいねカラ松大好きって言われたいぃぃぃぃ!!!!)
涙と共に我慢汁が出そうだ。だがハニーの前でそんな失態を晒すわけにはいかない。男たるもの女の前で涙は——
「カラ松!」
「え?」
「またボーッとして!かかってるよ!」
とびきりの笑顔でオレを見つめ、釣り堀を指差すハニー。
「オーケー!ファイナルチャンスに全てを…」
と、途中まで言いかけた刹那、オレの釣竿が2本になった。