第9章 リクエスト作品 オレがオレであるために〜カラ松〜
チョロ松はオレの腕を振り解き、眉間に縦じわを刻んだ。
「頭きた!もうついてくんな!しつこいんだよ!」
「待てっ!オレはただブラザーを労わりたいだ………あぁぁあっ!!」
「やかましい!耳元で叫ばないでくれる?」
ジーザス!話しながら歩いていたら古本屋に着いてしまっていた。
カラ松ガールを目前にし、ハートがトキメキ警報発令中だ。
嬉しさと緊張で心の臓が押し潰されそうになり胸を押さえる。恋とはこんなにも甘く苦しいものなのか。
「ついに辿り着いてしまったな…!いいだろう。そんなに知りたければ教えてやる」
「話の流れおかしいだろ!お前を知りたいなんて一言も言ってない!速やかに帰れ!」
「それは、ひと月ほど前の話だ。この古本屋でオレはカラ松ガールに出会いそして」「だから知りたくないしお前に付き合う時間ない」
「待ってぇぇええ!!」
半ベソかきながら手を広げて立ち塞がると、なんとかチョロ松の足を止めることに成功した。
「いい加減にしてよ。なんで邪魔すんの?僕はこの本を売った金でDVD買って有意義な時間を過ごしたいの。喧嘩売ってきたり意味分かんないタイミングで自分語りはじめたり、お前は何がしたいのカラ松?」
ゴマ粒のようなつぶらな瞳を細めて、静かなる怒りをオレにぶつけるチョロ松。
クッ…!これはネチネチとしつこく小言を言ってくるパターン!時間が無いと言いながら自ら説教で時間を費やし、それすらも他人のせいにする終わりなき悪夢!なぜこんな面倒なことになってしまったんだ!?ゴッドよ、オレが何をしたというんだ?まぁよく考えれば何かしらしているが!
小言の呪縛から逃れる為には…
(仕方ない。潔く謝り本は諦めよう)
手を降ろし踵を返す。
「分かった。もういいさ。カラ松ガールと少しでも話したかっただけなんだ。しつこくしてすまなかったな」
「ほんとに悪いと思ってる?」
「あぁ。悪かった」
「反省した?」
「したした」
「じゃあいいよ。許す」
「んーー?」
振り返りチョロ松を見やると、怒りで反転していた逆ハの字眉がいつものように下がっている。
なんだ?なんかチョロくないか?