第9章 リクエスト作品 オレがオレであるために〜カラ松〜
「フッ、パーフェクト」
今日のオレを彩るのは、ダメージジーンズの短パン、松模様のスパンコールをあしらったタンクトップ、先がとんがったシャイニングゴールドの靴。
今日も見事なパーフェクトファッションだろ?
きっと、彼女も早くオレに会いたくて仕方がないに違いない。
「ねぇ、それ寒くないの?」
聞き馴染みのある声がして顔を上げれば、緑のネルシャツが目に入った。
カラ松ガールに会いに行く途中で、まさかブラザーに出くわすとは…。運命は悪戯好きだぜ。
「なんで11月にそんな格好してんだよ。いや、季節感以前にいろいろと問題はあるけど」
「いいんだ。凍え死にそうだが、これがオレがオレでいられるファッション……」
「あ、そう。じゃあ」
「ちょ、ウェイト!」
そう、オレは見逃さなかった。ブラザーが持った紙袋の中身を。
「ブラザー?その本をどうするつもりだ?」
「いらないから売るだけだけど?」
「フーン、そうか。ならばオレが売ってきてやろう。忙しいブラザーの手を煩わせる訳にはいかないからな」
「べつに仕事してないから暇だし煩わないし」
チョロ松。兄を気遣うその姿勢、悪くはないが今はオレに本を委ねてくれないか?
少しでも彼女と話す口実が欲しいんだが…。
ブラザーの肩に腕を回して口角を上げる、オレ。
「遠慮するな。売り上げをくすねたりはしない」
「おぉい!ちっかいなぁ!だから、売りに行くついでに店見たいからべつにいいって!」
なかなか頑固なブラザーだ。だがオレも一歩も引かないぜ!
「いいや。こんな寒い日にブラザーを外出させて風邪でも引かせたら大変だ!」
「こっちの台詞だよ!クソ寒い格好で徘徊してないで家帰れ」
「フッ、心配には及ばない。チョロ松こそ家に帰りシコシコすればいい」
「え?まさか今このタイミングで喧嘩売った?」