第6章 基礎は復習。
「君ならできるだろう」
「……」
最初は何を言いたいのか分からなかった。烏間先生は普通に言ったけど。
いやいやいやいや!!! 一昨日3時間かかったんですよ!!!! そりゃね!! 今の2人よりは慣れてるかもしれないけれど!!!
「君は一昨日、昨日とかなりやった。前よりも短い時間で倒せるはずだ」
私を真っ直ぐ見つめる烏間先生に、言葉をなくす。ここまでストレートなこと言われちゃ何も言い返せない。
「……頑張ります」
ナイフを口に加え、軽く屈伸。
「京香ファイトー!」
「でも磯貝君と前原君でも無理だったんだよ?」
外野の声はとりあえず無視。
目を閉じて小さく深呼吸。ここには私と烏間先生しかいなくて、烏間先生に少しでもナイフが触れればオッケー……よし、行ける! 私は目を見開いた。
「……じゃあ、いきま、す!!」
言い切った瞬間にダッシュ。
烏間先生はさっきから右と左に避けてる。だから正面から向かっちゃダメだ……!
私は助走をつけてジャンプで左側にいった。烏間先生は右にいるから右にナイフを突き出す。
「!」
軽く押さえられた。
……まだまだ! 一発で決まると思うのが大間違いだ!!
そのままの勢いで私は地面に思い切り転がる。今度は下から!
烏間先生の黒いズボンが見える。そこに向かって左手を伸ばし、軽く掴んだ。
「っ!」
下からは予想外だったのか、烏間先生が驚くのが見上げて分かる。でもこのままだと押さえられる……から!
私は足に沿ってグルンと反時計回りに回った。左手を右足から離し、今度は左足にひっかける。これで烏間先生の背中側に回り込んだ事になるから……っ!
「やぁ!!」
立ち上がる時間がもったいない!! 私は右足の膝裏にナイフを当てた。
膝カックンの要領で烏間先生が軽く倒れる。
「!! ……」
私は立ち上がって烏間先生をみた。
「ハァ、ハァ…………」
こ、これで良いのかな……!?
「……意表をついたナイフ捌きだ、素晴らしい」
烏間先生は土を払いながら立ち上がった。