第3章 第1話は諦めと共に。
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「…」
私はまた放課後に教員室を訪れた。
「……殺せんせー」
「おや東尾さん。早速その名前で呼んでくれるなんて嬉しいですねえ」
結局、誰も殺せんせーを殺せなかった。
あのまま鐘が鳴り、授業は終了。
「……殺せんせー、さっきの表札…私のやつ、なかったね。住所、知ってるでしょ」
「……」
そう、分かってる。
こっちの世界には、家族も中学校からの友達もいない。脅しなんて効かない。
「……表札、手入れしてくれれば良かったのに」
「…この教室にいる時間だけは、苦しいことを忘れてほしかったのですが…失敗ですね」
「ふぅん……ありがと」
「えっ」
すると扉がガラッと開いた。
「東尾さん」
「……あれ、烏間さん!」
「ここにいると思ったんだ。少し家や家具の手数料について話したくてな」
「えっここで!? 烏間さん! 私は生徒と話しているんですよ!?」
「超生物は黙っておけ」
「烏間さん。丁度良かったです。私も…言いたい事があったので」
「ん?」
今日、渚君を見て思ったんだ。
私も、私に出来ることをしたいって。