第28章 沖縄旅行は海の香り
「く、悔しいけど普段のカラスマを知ってんのはあんたでしょ。よく家でご飯食べてんじゃない」
イリーナ先生はむくれながらも私にびっと指を当てた。
「え、東尾さんよく家に烏間先生来てるの!?」
「う、うん……保護者代理だから、週に2回か3回くらいだけど、ご飯を……」
倉橋さんは目をまん丸にして驚いている様子だった。
「でもイリーナ先生もよく同席してるじゃない」
「それはそれこれはこれよ! どうなのよ!」
「どうなのって……」
烏間先生の好きな人とか好みとか……ってもう目の前にいるイリーナ先生だとしか思えない。というかラストにあなた達くっつくんですよ、子どもまでいるんですよ。
ラストを知っていると逆に想像力が働かない。うんうん悩んだ末にとりあえず嘘は言わないことにした。
「…………仕事を頑張ってる人……が好きだったと思う……ご飯は……いつも好き嫌いしてないイメージ……かな……。あと、笑うっていうよりはよく見ると微笑んでる事が多いと思う……」
イリーナ先生は人の機敏をよく分かる人だ。きっと1体1でディナーをすれば、烏間先生がいつ嬉しいと思っているかも分かるはず。
「と、とにかくディナーまでに出来る事は整えましょう」
焦った殺せんせーはメガネを直しつつこう言った。
「女子は堅物日本人が好むようにスタイリングの手伝いを、男子は2人の席をムード良くセッティングです」
元気に返事をし慌ただしく動き出すE組。
「よっしゃ動くか!」
なんて喝を入れられると、イリーナ先生は驚愕の眼差しで私たちを見つめていた。