第28章 沖縄旅行は海の香り
「清楚つったらやっぱり神崎ちゃんか。昨日着てたの乾いてたら貸してくんない?」
「あ、う、うん!」
慌てて部屋に帰る神崎さんがこの数分後持ってきた服をイリーナ先生に着せた時、私たちは頭を抱えた。
「ほら、服ひとつで清楚に…」
神崎さんが昨日清楚に着こなしていた白フリルのワンピースは、どこからどう見てもいつものイリーナ先生に似合う服になってしまった。
「なんか逆にエロい!!」
「そもそも全てのサイズが合わないっての」
全てのサイズというのは外国人のイリーナ先生的にはスカート丈も、バストサイズも小さすぎたということだ。
「神崎さんがあんなエロい服着てたと思うと…」
神崎さんの顔も真っ赤だ。
「もーいーや、エロいのは仕方ない!! 大切なのは乳よりも人間同士の相性よ!!」
茅野ちゃんが高速で頷く。いや……わかるけども!
「烏間先生の女性の好みを知ってる人は?」
「あ! そういえばさっき!! TVのCMであの人のことベタ褒めしてた!! "俺の理想のタイプだ"って!!」
矢田さんが指したテレビをみんなで見る。
そこに写っていたのは某警備会社のコマーシャル。出演していたのはオリンピックのみならず数々の世界大会で優勝したレスリングの女性選手だった。
……いやこんな人私のいた世界にもいたわ!!
「理想の戦力じゃねーか!!」
「いや…強い女が好きって線もありうるけど、ならなおさらビッチ先生の筋肉じゃ絶望的だね」
竹林くんが微笑みながらメガネをあげる。
……?
このシーンこんなんだったっけ……?
僅かな違和感は流れる会話にかき消された。
「じ、じゃあ手料理とかどうですか? ホテルのディナーも豪華だけど、そこをあえて2人だけは烏間先生の好物で」
愛美ちゃんが顔を赤らめながら発言したその案は秒速で却下された。
「烏間先生ハンバーガーかカップ麺しか食ってんの見た事ないぞ」
「…なんかそれだと2人だけ不憫すぎるわ」
話せば話すほど烏間先生のつけ入る隙のなさが浮き彫りになってゆく。
「なんか烏間先生の方に原因あるように思えて来たぞ」
「でしょでしょ?」
「先生のおふざけも何度無情に流された事か」
今度は別の方向で皆の心が一致しはじめる。
「京香はどう思うのよ!」
「へ!?」
漫画に入るところだから、と端の方で笑う程度に留めていたのだが、イリーナ先生に呼ばれた。