第28章 沖縄旅行は海の香り
21時に始まったディナーは開幕早々いびりから始まった。
「……なんだこれは」
烏間先生が少しぽかんとしている姿は珍しい。
「烏間先生の席ありませーん」
「E組名物先生いびりでーす」
中村さんと岡野さんが足を伸ばし切り椅子を埋める。オシャレな白テーブルの机はたくさんあるが、先生の席はない。
「先生方は邪魔なんで、外の席でどうぞ勝手に食べて下さーい」
ぴ、と指さす先にはふたつだけの席。
「…何なんだいきなり? 最近の中学生の考える事はよくわからん」
烏間先生は困惑しつつも外へと続く扉を開け、イリーナ先生の待つ椅子へ向かった。私達は即座にベランダに張り付く。
「あのショールどうしたの?」
イリーナ先生の格好はプロポーションを生かしつつも上品な仕上がりになっている。
「売店で買ってミシン借りて…ネットみながらブランドっぽくアレンジした」
「原さん家庭科強いもんなー」
穏やかな会話が続く横では倉橋さんがハンカチを噛んで
「ふううう」
と奇妙な声を発している。そういえば倉橋さんは烏間先生が好きだった。その意味が重いかどうかはまだ測りかねるけども。
「フィールドは整った、いけビッチ先生!!」
ここからではあまり会話や様子は知ることが出来ない。
私はアニメと漫画を頭の中でめくった。
……そうだ、イリーナ先生は自分が人生で一番最初にした『殺し』について話していた。