第28章 沖縄旅行は海の香り
「……11月8日……3週間or4週間前より体調管理の為身を預ける……シロから呼ばれる……」
なんだこれは。
「あの野郎に体調管理されなきゃならないことって……」
さすがにバカの俺でもわかる。
「家族のことか……」
「ん」
ぴく、と眉毛が動いた。
やばい、今度こそ起きるか?と思い慌ててポーチを再度腰に巻く。
手を腹の上に置き、空を見上げながら眠っていた東尾はまるで白雪姫か人魚姫のようで、差し込む光よりも眩しい位だった。
───────
「……ん、ん…?」
もぞもぞ。何だかくすぐったい気がしてゆっくりと瞼を持ち上げる。
「…………寺坂……?」
霞がかった世界の向こうにいるのは寺坂な気がした。
「おう、合ってるぞ」
「なんで寺坂がここに……」
「お前が寝てたからクラス代表として残ったんだよ」
そうだ、殺せんせーに安心して私はそのまま砂浜で寝てしまったのだった。
「そう……皆は……」
「肝試ししてるらしいぜ」
「そう……肝試し……肝試し……肝……」
肝試し。
「肝試しィ!?」
思わず跳ね起きるとこちらを覗き込んでいた寺坂とおでこが思い切りぶつかった。しばし二人で悶絶する。
「おまえ……もうちょっと前兆あれよ……何なんだよ今の……エビみたいな角度で跳ね上がりやがって……」
「言っとくけど私もめっちゃ痛いからね……」
これは湿布でも貼ってたんこぶを防止するべきか。
「……ってそれよりも! なんで肝試し行かなかったのよ!」
「はあ!? お前が寝ちまって渚が俺が残るとかほざいたからだろうが!!」
全く、なんで寝てるとまあ見れる顔してるのに動くとこうなんだ、と呟く寺坂。
「見れる顔って何、見れる顔って!」
「静かで神崎みてえだって言ってんだよ!」
「か、神崎さんん!?」
そこで会話が1度ストップ。
「……いや……それはないわ。自分で考えても髪の色位しか合わない」
「否定するな否定」
「てか肝試しよ! 何あんた、狭間さんのことほったらかしにしてこっち来ちゃったの!?」
「はあああ!? 村松も吉田も原もいるし本人が全然構わねえっていうからこっち来たんだよ!!」
私自身は全然気にしてないと言いたいけれどぐっと抑える。
違うんだって、あんたは漫画だと狭間さん達と一緒に肝試し楽しむんだってば。