第28章 沖縄旅行は海の香り
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「…………」
皆が島の海底洞窟で肝試しをしている頃。
俺は砂浜でむにゃむにゃ言いながら眠る東尾を見下ろしていた。
遠くから騒がしい声が聞こえてくる。その声がどこか違う世界のように思えて俺は被りを振った。
「……お前、なんであのタイミングで冷えピタなんて持ってたんだよ」
まるで俺がウィルスにかかったままホテルに乗り込むことが分かっていたかのように。
「なんですぐ話逸らすんだよ」
東尾の横顔は僅かに残る夕陽と登り始めた月光に照らされ、夏の離島というシチュエーションも相まり幻想的にも程がある雰囲気を醸し出していた。
「……お前は、何者なんだ」
いつも思う。毎日教室に入ってくる度に、何か異質な物が入ってきたような気がする。それが好きとか嫌いとかに関わらず、何となく空気でわかるのだ。何でだが、ここにいてはいけない者のような、ここにいてほしい者のような、そんな事を思う。
東尾の腰にまいたポーチを見やる。俺が見た時はこれの中から冷えピタが出てきた。他にも絆創膏や軟膏がある様子も見た。
「……ごめん、ちょっと触るぜ」
さっき東尾が倒れかけた時不満げな目で見られたので、一応声をかける。多分急に触るなとか言いたかったんだろう。ヘリの中でも触っちまったしな。
ポーチを東尾が起きないように丁寧に外す。
「ん……ん」
「!」
ごろん、と寝返るのに息を詰める。
頬についた砂がその形を保てずさらさらとまた地面に着地していく。
「……ふう」
カルマが東尾の事を一時期探っていたのを知っていた。クラスメイトが東尾について何かの違和感を感じたり、心配そうに見ているのも分かっていた。そして俺も心配なのだ。この優しくも儚く、どこか危うい少女が。
「多少の荒療治は俺の仕事だよなあ」
その役回りに今更悔いはない。俺はフットワーク軽く動く方が向いていると知ったから。
ポーチの中には思った通り、何枚かの冷えピタ、束になった絆創膏、小さめのケースに入った軟膏、その他医療用道具がいくつか出てきて……
「ん?」
最後に紙がでてきた。