第28章 沖縄旅行は海の香り
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「あ、聞きやすくなった……こっちに歩いてきてるんだ、もっと隠れよう」
京香も訓練してるから気配を察知されてるかもしれないけど、とにかくやってみるしかない。
「……だから、ね…………」
徐々に聞き取れる声が多くなる。
「ね、学秀。許してね」
(許して……?)
どういう事かと思案したがその疑問は一瞬で解けた。
「私……10月にはいなくなると思う」
『いなくなる?! どういう事だ』
「言葉のまんまなの。もしかしたらお父さんとお母さんと弟の元に戻れるかもしれない」
『……生きて……』
「うん生きてる。すごく……すごく遠くにいるんだけど。戻れたら、ここには帰ってこない」
『……そうか』
「どっちかだって言われたの。家族を選ぶか今の生活を選ぶか。どちらかを選んだらどちらかを捨てることになるって、そう、言われた、から……」
ぐすりと鼻水をすする音が聞こえる。
京香がいなくなる。10月に。
それは私にとってもだいぶ衝撃的な事だって。
『……泣いてるのか、京香』
「な、いて……る」
クラスメイトに涙を見せない京香。
前泣いた時もシロと初めてあった時だけだった。それが浅野君に対しては簡単に感情を見せるなんて……。
どういう繋がり?
磯貝くんと目を合わせて困惑した。