第28章 沖縄旅行は海の香り
『この時期にはいつも、E組からA組に編入するよう理事長が個人的に呼びかけるんだ。まあ多くて1人か2人だが。それが今年は誰も来ないと言い切った』
…………え?
『正しくは京香を除いたA組に編入するにふさわしい成績のメンバー全員が、だが。いつも皆E組からA組に抜けたがっているのに。何故だ』
「ちょちょちょ、ちょっと、まって……ねえ、本当に全員?」
待ってほしい。
確かにその制度、漫画にもでてきた。
でもそれは、竹林くんだ。
竹林くんは、家族との事で悩んで、A組に編入することを決めた。
E組の男子で一番頭がいい。だから、簡単に編入もできた。その後様々色々あって、自ら望んでまたE組に戻ることになる。
「……どういうこと…………?」
今まで僅かしか無かった暗殺教室との誤差がどんどん大きくなってゆく。
それは間違いなく私というイレギュラーがいるから。
私のせいだ。
『……い、おい聞いてるのか京香!』
「は、はひっ!?」
遠くに行っていた意識を取り戻したのはスピーカーから流れた学秀の爆声だ。
『一人もだ。竹林も片岡も50位以内に入っていたE組には全員声をかけた。その結果誰もE組から抜けだからなかった。うちの家はピリピリしてるぞ』
「家…………」
そうだよね、学秀の家には浅野理事長がいるんだ。当たり前だけど。
『……何故なんだ? 何故今年のE組は、こんなにも違う。期末テストの時から、僕の頭はそればかりだ』
「それは……」
答えられない。
100パーセント、答えられない。
「……ねえ、学秀」
『何だ』
「私がいなくなるって言ったら、どうする?」
常々気になっていた事。
こんなにも敏い学秀が、私の存在を深く掘り下げない。
何故?
学秀は一度黙った後、低い声でこう言った。
『……話を逸らすなよ、京香。自分に都合の悪い話を避けるのはお前の悪い癖だ』
!
「……気づいてたの、学秀?」
『当たり前だ。しかもその後に振った、いるいなくなるだのの話も聞き込んだら話を逸らすだろう。以前のように。その癖、直せ』
「……ごめんね、学秀」
でも言えないや。
そう言うと、学秀はため息をついてかすかに微笑んだ。ような声が聞こえた。
「言えないなら最初からそういえ。どうせE組の秘密などA組の僕達にかかれば一瞬だ」