第28章 沖縄旅行は海の香り
それ以外の部分を省いて言うなら。
「えーと……ダイビングしたり、ハングライダーしたり、山の中ハイキングしたり……? あ、浜辺で遊んだりとか……今皆寝てて、私浜辺歩いてるんだけど」
『ハア!?』
学秀は今度こそ軽蔑した声を上げた。
『……E組は椚ヶ丘高校に行けないんだよな? 分かっているのか、お前達は受験生なんだ。この場にいたら一体何をしていると怒鳴りつけているところだ』
「……うーん、確かにそうだよね」
でもなんだろう。
「うちの担任は効率よく勉強するからね。A組には絶対負けないよ」
息を呑む音が聞こえた。
『…………望むところだ。その時は敵だな』
口角を上げる学秀が頭の中で再生される。
「……あ、海の音聞く? いい音だよ。周りに人もいなくて、プライベートビーチなのかな。すごく、綺麗……」
『え?』
そっと地面にスマホを置き、音をスピーカーモードにする。
ザザ、と寄せては返し、波がゆるやかに目に映る。私が踏んできた足跡も波に掻き消えて、真上に上がった太陽はさんさんと降り注ぐ。
「……ね、いいところ」
『…そうだな……』
もしかしてビデオ通話のがよかったか、なんて思うけど今更電話切ってまたかけるのも面倒だし、そもそも電話をかけてきたのは向こうだし。
「……で、用事ってそれだけ?」
電話で、E組の皆といると思わしき時間に、何故私に電話をかけてきたのか。
含みのある言葉に気がついたらしい。学秀は黙り込んだ。
「ちょっと、電話なんだから喋んないといるか分かんないよ」
『いや、京香には何でもお見通しだと思っていただけだ。E組に落ちるほど馬鹿だが人の気持ちをはかるのは上手い。いや、上手すぎるんだな』
「何よそれ」
とにかく本題に入ってちょうだい。
そう言うと学秀は諦めたのかスパンと吐き捨てた。
『改めて聞く。今年E組には何があるんだ』
「……ほほー?」
少しふざけた様子で聞き返すと、学秀はううんと唸ってから『そのふざけをやめろ』と言ってきた。
「……なんで今更そんな事言うの?」
『前々から思っていた事を言うなら今年は皆担任を信用しているのか50位以内に入っている者でもE組を抜けたがらない。そして妙に強い。あとは』
続けて学秀が言った言葉は、私を困惑させるに等しい言葉だった。