第28章 沖縄旅行は海の香り
なんだか大部屋で掛ける気にはならない。
まあ相手はA組だ。
私個人としては仲良くしたくない訳では無いけど、友達と言うにも妙な距離感で、知り合い以上友達未満をキープしている。
そんな相手からの急な電話。
私は海へと足を向けた。
浜辺に辿り着くと、遠くに烏間先生が見えた。どうやら殺せんせー(球体)を包む対先生弾を周りに敷き詰めているらしい。
「ヌルフフフ、そんな事をしても無駄ですよ」
と張り上げた声を出す殺せんせーの声がかすかに聞こえる。
「ふふ、変わんないなあ」
暗殺寸前まで行ってとんでもなく悔しかったけど、先生はやっぱり私たちの先生で。生きていてくれてよかったと私は思ってしまう。
「……さてと」
ずっと鳴っている電話にようやく応答する。
『……遅い! 京香、今何時だと思ってるんだ!』
「わわわわわ!」
どこぞの芸人のような高い声を出した後、冷静に腕時計を見る。
「……もう12時かあ」
『そうだ! 昨日からかけてるのに全然かからないから今度こそと……!』
「そっか、昼休みだもんね! ……ってあれ? 今夏休みだよね?」
電話の向こうの学秀はん? と母音を含む声を上げると、気の抜けた声を出した。
『ああ……今日は講習だからな。皆で勉強だ』
「へえ、南の島来てなくても勉強はあるの」
学秀はそれを聞いてく、と歯をくいしばる音を電話越しに伝えてきた。
『……E組が南の島に今行ってるのは知っている。勉強で疲れた頃なんじゃないかと思って電話したんだ』
「何それ、嫌がらせ?」
まあ私も煽ったみたいなもんだしお互い様ね、と笑うと学秀も向こうで息を漏らした。
「でもお生憎様。私達勉強してな……いや、えーっと、あんまりしてないんだ」
『何!?』
といっても学秀なら勉強する環境の方が喜ぶのかな。
案の定、学秀からは
『だから京香はE組なんだ』
だのなんだのぶつくさと言われた。
『じゃあ何をしてるんだ』
「何……」
暗殺、ホテル潜入、戦闘をしかける。
何を言っていいのか全く分からない。