第28章 沖縄旅行は海の香り
もうすぐ夜明けがやってくる。一晩の私たちのミッションはようやく終わろうとしている。東の空に、暁が兆していた。
「よくやってくれました、渚君」
落とされた階段をかけ、渚君が降りてきてから、殺せんせーは茅野ちゃんに抱えられてほっと息を着いた。
「今回ばかりはどうなるかと思いましたが…怪我も軽そうで安心しました」
しかし渚君はあまり嬉しそうではない。
「……うん。僕は平気だけど…でも」
目の前には散らばったガラス。濡れてコンクリートの色を変えている液体。
「…どうしよう、皆への薬が……鷹岡先生から奪った分じゃ全然足りない」
黙り込む皆。
「…とにかくここを脱出する。ヘリを呼んだから君等は待機だ。俺が毒使いの男を連れて来る」
烏間先生が厳しい顔で言ったその時。
屋上へと通じる扉が開いた。
「フン、テメー等に薬なんぞ必要無え」
そこに差す三つの影。
「ガキ共、このまま生きて帰れるとでも思ったかい?」
そう言ったのは千葉くんと凛香に銃で破れたガストロ。
右後ろにいるのは不破さんに暗殺者であることを見破られ烏間先生に蹴られたスモッグ。その頬は大きく腫れている。
左後ろはカルマくんに麻痺ガスをくらわされ辛子やらなんやら大量に詰め込まれたグリップ。唇が真っ赤に染め上がり、見るからに憤怒の表情。
「……!!」
皆が警戒心を高めて三人に向かい合った。