第28章 沖縄旅行は海の香り
刹那、爆発音が響いた。
皆の治療薬をまるでエネルギーにしているかのように。破片がバラバラとこちらに飛んでくる。ガシャガシャとガラスが舞う。
殺せんせーも、烏間先生も、寺坂も、皆の顔が驚き、絶望に変わった。
「あはははははははは!! そう!! その顔が見たかった!!」
渚君の、青ざめたなんて言葉じゃ表せないほどに蒼白になった顔を見て、鷹岡は高笑いした。
「夏休みの観察日記にしたらどうだ? お友達の顔面がブドウみたいに化けてく様をよ、ははははははは」
嫌だ、嫌だ。そんな話をしないでくれ。だって私の横には寺坂がいるんだ。ウィルスに侵されていると本人は思っている。キツイ思いをしている。なんでそんな事が言えるの?
「安心しな、おまえにだけはウィルスを盛ってない。何せおまえは今から…」
渚君に向かって意気揚々と喋り出した鷹岡は、渚君の様子に気がついた。
カチャ、とナイフを持つ音。
荒い息。
みんなもその異様な気配に息を呑む。
「殺…してやる…」
渚君がナイフを構えた。その目は澄んで、妙にギラついている。
「クククそうだ。そうでなくちゃ」
頬が傷まみれの鷹岡が舌なめずりをする。口角をあげたその顔を殴りたくて仕方なかったけれど、この手はあまりにも弱い。