第28章 沖縄旅行は海の香り
ー……8階、コンサートホール。
息を詰めて、殺して、静かに私たちはそこにいた。
なぜならホールに侵入してすぐに……。
「……………15、いや16匹か? 呼吸も若い。ほとんどが十代半ば」
……三人目の暗殺者、ガストロが見回りに来たからだ。
「驚いたな。動ける全員で乗り込んで来たのか」
いや驚くのはこちらです…普通椅子の後ろに隠れてて見えないこちらの人数、年代なんて分かるわけもないのに!
刹那銃声音が響いた。それと同時に何かが割れる音。
「言っとくが、このホールは完全防音で、この銃はホンモノだ」
音の余韻がホールに反響する。試し撃ちといわんばかりに撃った銃弾は見事にライトに当たった様だ。
「おまえら全員撃ち殺すまでだれも助けに来ねぇって事だ。おまえら人殺しの準備なんてしてねーだろ!! おとなしく降伏してボスに頭下げとけや!!」
言い終わるやいなやまた銃声が響いた。
今度はこちら側…凛香の狙撃だ。
しかしその弾はわずかにガストロの手を逸れた。
ガストロはしばし唖然としたあと、考え直したように奇妙な笑い声を上げた。
「意外と美味ぇ仕事じゃねェか!!」
その言葉と共に轟音が鳴り響いて、ステージが明るく光りだす。
ガストロがステージの照明をつけたのだ。
「今日も元気だ、銃が美味ぇ!!」
そうだ、ガストロは(よく分からないけど)銃の先端を舐めてその日一番美味しかった銃を使うとかいう性癖の持ち主だった!!
そのガストロがもう1度撃った銃口の先は……凛香だ。座席の間の狭い隙間を通して、的確に撃ってくる。
「一度発砲した敵の位置は絶対忘れねぇ。もうお前はそこから一歩も動かさねぇぜ」
……確かに殺し屋だ。外さない本番の力と、それに見え隠れする影の努力。
「下で見張ってた2人の殺し屋は暗殺専門だが、俺は違う。軍人上がりだ。この程度の一対多戦闘は何度もやってる。幾多の経験の中で、敵の位置を把握する術や、銃の調子を味で確認する感覚を身につけた。ジュニアごときに遅れを取るかよ」
あまり動かないように、横目で皆を見るけど、その表情は厳しい。最前列にいる烏間先生の顔が頭に浮かぶ。
「…さぁて、おまえらが奪った銃はあと一丁あるはずだが」
ガストロがそう言って銃を舐めまわした時。