第28章 沖縄旅行は海の香り
一方烏間先生は、まだあまり定まらない視点でボディーガードの二人を見ていた。
殺せんせーはそんな烏間先生に気付いている素振りをしながらも、寺坂に声をかけた。
「…いい武器です、寺坂君。ですが、その2人の胸元を探って下さい」
「あン?」
と言いながらも寺坂がボディーガードの胸元をごそ、と探ると。
「ふくらみから察するに…もっと良い武器が…手に入るはずですよ」
寺坂の手が一旦ピタリと止まった。険しい顔になり、そのままズッ、と手を引き出す。
重みがある、でも見慣れたフォルム。
……本物の銃だ。
「そして、千葉君、速水さん。この銃は君達が持ちなさい」
クラスでもトップで銃が上手い二人。それでも今回は驚いたようで、二人とも静かに先生を見つめた。
「烏間先生はまだ…精密な射撃ができる所まで回復していない。今この中で最も『それ』を使えるのは君達2人です」
「だ、だからっていきなり…」
「ただし!」
殺せんせーはいつものように顔に文字を浮かべた。
その文字は……『不殺』だ。
「先生は殺す事は許しません。君達の腕前でそれを使えば、傷つけずに倒す方法はいくらでもあるはずです」
2丁、ぽんと渡された銃を二人は緊張した様子で握りしめた。
……大丈夫だよ。
「気休めにしかならないかもしれないけど……二人なら、出来るよ。私のお師匠だし……みんなの憧れだから。気負わないで!」
「京香……ありがとう」
凛香は少しだけ微笑んだ。きっと無理してるんだろうけど……それでも、言わないよりマシなはずだ。
あなたを信じているという言葉を。あなただけに責任は負わせないという気持ちを。
「さて行きましょう。ホテルの様子を見る限り…敵が大人数で陣取っている気配はない。雇った殺し屋も残りはせいぜいひとりふたり!!」
「おう!! さっさと行ってブチ殺そうぜ!!」
喝を入れるかのように叫んだ寺坂に、何か違和感を覚えたようで、渚君はじっと後ろ姿を見つめている。
「どんな顔してやがんだ…こんなクソ計画立てる奴はよ!!」