第28章 沖縄旅行は海の香り
「任せてくれって……おい木村」
殺せんせーを持っている木村くんに、寺坂が呼びかける。
「テメー1人ならすぐに敵とは思われねーだろ。あいつらをちょっとここまで誘い出して来い」
と、屈強なボディーガードをこちらに引き寄せるような仕草をする。
「俺がァ? どーやって?」
「知らねーよ、なんか怒らせる事言えばいい」
木村くんは悩むように眉を寄せた。カルマ君がそんな木村くんに近づき、
「じゃあこう言ってみ木村、ゴニョゴニョ」
と耳に唇を寄せて言い出す。
「ノッてきたねカルマ君」
殺せんせーを持ちながら渚君が苦笑い。カルマ君の考える事なんてイタズラ系以外考えられないもんね。
しばらくして。
考えがまとまったのか、木村くんはボディーガードの方へ歩き出した。
そしてボディーガードの目の前で止まる。
「? …何だボウズ」
木村くんは緊張した面持ちで、
「…あ」
と小さい声で言い、言葉を続けた。
「あっれェ〜、脳みそ君がいないなァ〜、こいつらは頭の中まで筋肉だし〜」
キョロキョロとわざとらしく周りを見渡し、そのまま踵を返しながら、
「人の形してんじゃねーよ豚肉どもが」
と言い放った。
「おい」
「待てコラ」
……言葉にするとこれだけなんだけど、すごい怒りがこもった声で二人のボディーガードは追いかけてきた。木村くんは全速力でこちらに走ってくる。
「ちょ、くっ…」
「なんだこのガキクソ速ぇ!! てかこいつもしかして…」
ボディーガードが話す中、木村くんが私たちの目の前を通り過ぎた。
「おっし今だ吉田!!」
「おう!!」
私たちがいる通路から寺坂と吉田くんがとび出て、ボディーガード二人に食らいつく。
手元に見えるのは……スタンガンだ!
バチ、と剣呑な音がして、ボディーガード達は気絶した。
「ス…スタンガン…」
「タコに電気を試そうと思って買っといたのよ、こんな形でお披露目とは思わなかったがよ」
「買っといた…って、高かったでしょそれ」
イケメグに指摘されると、寺坂は居心地悪そうに、
「ん…最近ちょっと臨時収入あったもんでよ」
と言った。
……シロと繋がってた時か。確かプールに殺せんせーを弱らせる液体を流した時にお金貰ったんだっけ。
…起こってしまった事を活かす。E組にふさわしい人に…寺坂もなったんだ。