第28章 沖縄旅行は海の香り
「どうしたの、渚?」
茅野ちゃんが何かに気づいたらしく渚君ににっこり笑いかける。
「…いや、結局今回女子が全部やってくれたし、僕がこんなカッコした意味って…」
「面白いからに決まってんじゃん」
「撮らないでよカルマ君!!」
渚君はもう女装をやめたがっているが、そんな渚君を見て茅野ちゃんは意味有り気な笑みを浮かべた。……きっと、さっきのユウジが渚君に好意を抱いたことに気がついている……のかもしれない。女子の勘はすごいからね。
「そんな事ないと思うよ、きっと誰かのためになってるって!」
数分して、私達はまた歩き出した。もう時間もないし。
「あれ? 着替えるの早いな、渚」
目ざとく気付いたのはリーダー磯貝君。そのまま小さい声で話し続ける。
「う…」
「そのまま、行きゃよかったのに。暗殺者がオンナに化けるのは歴史上でもよくあるぞ」
「い、磯貝君まで!!」
どうやら渚君はリーダーにまで女子らしいと認められたのが気に食わない……というより恥ずかしいらしい。
「渚君、『とる』なら早い方が良いらしいよ。ホルモンとかの関係で」
カルマ君が渚君の下を指差し笑う。
「とらないよ!! 大事にするよ!!」
「その話は後にしてくれるか」
「…二度としません」
烏間先生が普通に対応したのがまた渚君の胸にグサッと来たらしく、見るからに落ち込んでいる。
「この潜入も終盤だ。律」
『はい、ここからはVIPフロアです』
VIPフロア……
「…ここからは警備が厳しくなる…」
私は思わずぽつりと呟いた。
『京香さん、その通りです。ホテルの者だけに警備を任せず、客が個人で雇った見張りを置ける…それがこのフロアの利点です』
「そんで早速上への階段に見張りか、超強そう…」
菅谷くんの言った通り、ムキムキ且つ屈強そうな男が二人いる。
「私達を脅してる奴の一味なの? それとも無関係の人が雇った警備?」
「どっちでもいーわ、倒さなきゃ通れねーのは一緒だろうが」
寺坂がバキっと手の骨を鳴らす。
「その通り、寺坂君。そして倒すには、君が持ってる武器などが最適ですねぇ」
武器? と周りがぽかんとする中、寺坂だけは、
「…ケッ、透視能力でもあんのか、テメーは」
と言いながら持っていたリュックに手を出した。
「…出来るのか? 一瞬で2人共仕留めないと連絡されるぞ」
と烏間先生が心配そうに言う。