第28章 沖縄旅行は海の香り
「いくら周囲が水とはいえ、あの水着を隠し持ってたら逃げられるしね」
「入念ですねぇ、そんなヤボはしませんよ」
渚君は殺せんせーの背中をポンポンと叩き確認している。
渚君のボディチェックが終わったあと、殺せんせーはテレビの真ん前にあるベンチに腰掛けた。
「準備はいいですか? 全力の暗殺を期待してます。君達の知恵と工夫と本気の努力。それを見るのが先生の何よりの楽しみですから」
殺せんせーの後ろにみんなが立つ。
「遠慮は無用。ドンと来なさい」
殺せんせーのそんな言葉に、皆は笑った。
「言われなくとも、はじめるぜ殺せんせー」
岡島くんがパチリと電気を切ると、目の前のテレビがパアッと明るくなった。いよいよ上映……。
題名『3年E組が送る、とある教師の生態』。情報提供・潮田渚他、撮影・岡島大河、ナレーション・編集三村航輝、と右下に書かれている。
途端に後ろがうるさくなった。位置と人数を明確にしないように、皆が出入りをするらしい。私も扉の近くに行ったりまた元の場所に戻ったりを繰り返す。
そして本格的に始まった三村くん編集の映像は……。
『…まずはご覧頂こう。我々の担任の恥ずべき姿を』
殺せんせーがカブトムシのコスプレでエロ本を拾い読みする姿が映し出されていた。
『おわかり頂けただろうか。最近のマイブームは熟女OL。全てこのタコがひとりで集めたエロ本である』
「違っ…ちょっ、岡島君達、皆に言うなとあれほど…」
殺せんせーが焦るのも構わず映像は続く。
『お次はこれだ。女子限定のケーキバイキングに並ぶ巨影。
誰あろう、奴である。バレないはずがない。女装以前に人間じゃないとバレなかっただけ奇跡である』
「クックック、あーあ、エロ本に女装に恥ずかしくないのド変態?」
狭間さんの言葉は胸に来るな。
『給料日前の奴である。分身でティッシュ配りに行列を作り、そんなに取ってどうすんのと思いきや…なんと唐揚げにして食べだしたではないか。教師…いや、生物としての尊厳はあるのだろうか』
ティッシュって食えるんだ…そういや愛美ちゃんが作った毒薬も飲んでたもんね。
『こんなものでは終わらない。この教師の恥ずかしい映像を一時間たっぷりお見せしよう』
殺せんせーの肩がビクリと揺れる。……心の中の悲鳴が聞こえるみたいだ。