第28章 沖縄旅行は海の香り
神崎さんは少し驚いた様子を見せた後、ゆっくり杉野君の方に目をやった。その目はどこか愛おしげでもある。……まあ友達、の意味かもしれないけども……。杉野君も神崎さんもかなり鈍感だし。
「…ふふ、ありがとう京香さん」
神崎さんは優雅に微笑んだ。
何時間か後。殺せんせーは全部の班を回り帰ってきた。
「いやぁ、遊んだ遊んだ」
……これは、なんだろうな。さっきもだいぶ変な形に焼けてたけど……。
「おかげで真っ黒に焼けました」
「黒すぎだろ!!」
……真っ黒だ。文字通り。焼けたって普通茶色っぽい感じかと思ったんだけど殺せんせーは黒すぎる。
「歯まで黒く焼けやがって」
「もう表情が読み取れないよ」
歯って焼けるのか……? 殺せんせーの成分は何で出来てるんだか。
「じゃ、殺せんせー。メシの後暗殺なんで。まずはレストラン行きましょう」
はーい、と元気に返事をする黒い殺せんせー。
「どんだけ満喫してんだあのタコ」
「こちとら楽しむフリして準備すんの大変だったのによ」
殺せんせーのルンルンな後ろ姿を見て寺坂たちが悪態をつく。
「ま、今日殺せりゃ明日は何も考えずに楽しめるじゃん」
「まーな、今回ぐらい気合入れて殺るとすっか!」
イリーナ先生が何かに気付いたように寺坂たちの方に振り向いた。……人を、殺すことを分かってる目で見つめている。
「ちょっとあんた達…」
!? こ、ここの場面でイリーナ先生は何も言わない、は、ず!!
私は自分の思考が固まる前にイリーナ先生に駆け寄り(ちょっと乱暴だけど)口を塞いだ。
「む、むぐぐー!?」
イリーナ先生が本気で抵抗していないのは私だと分かったからだろう。寺坂たちがだいぶ遠ざかった後ゆっくりと手を離すと、イリーナ先生は怒った様子でわめいた。
「京香ー!! いきなり何すんのよ!?」
「ご、ごめん……」
「…あんたがやったって事は最低限の意味がある、でいいのかしら?」
「ち、違う……かもしれないしそうじゃないかもしれない」
「ハッキリしろ!!」
イリーナ先生は、さっき言わなかった事を…後悔したかのような素振りを、今後見せることになる。
ああ、私の考えがまとまってないからか、自分で考えてる事もよくわからなくなってきた。……でも……。
「イリーナ先生はすごいよ」
「はあ?」
…暗殺をする上で……。