第28章 沖縄旅行は海の香り
「もうちょっとで殺せんせー来ちゃうし、急ご!」
「おう!」
杉野君の元気な返事に皆はテキパキと動き出した。
しばらくして、殺せんせーがうちの班へ。
殺せんせーはこの短時間で唐突に日焼けをしていた。
「なんだよ先生、その模様は」
「日焼けしました。グライダーの先端部分だけ影になって」
「だからってそんな変な焼け方する……?」
殺せんせーの顔は何とも説明しがたい日焼けの顔となっていた。
「さて、君達4班はイルカを見るそうですねぇ」
「うん、船だけど大丈夫?」
船に乗り込みイルカ鑑賞…かとおもいきや、殺せんせーはイルカと一緒に泳ぎ始めた(もちろん専用水着を着て)。
「いいな、私も泳ぎたいかも」
意外にもそう言ったのは神崎さんだ。
「わかる〜! あれって夢だよね!」
「私もイルカ…出来れば触ってみたいです!」
修学旅行の班わけだからもちろん愛美ちゃん、神崎さん、茅野ちゃんがいる。
「……杉野君、目がギラついてる」
ふと視線の先に杉野君がいて、あまりにその目がギラギラしていたので思わずつっこんだ。
「は!? い、いやいやいやいや!! 別にギラついてなんか……」
「水族館デート、イルカショー。ここまで浮かんだでしょ」
「ぐっ」
どうやら図星だったらしく黙り込む。
「そ、そういう東尾はどーなんだよ!」
「私? 私は…嫌いじゃないけど泳ぎ苦手だからなー。見てるだけで充分かも」
さらりと話をすげ替えるのは流石と言ったところか。杉野君のコミュニケーション能力の高さはすごいと思う。
あっという間に私たちの班の時間が流れてゆく。
殺せんせーはイルカと泳いで満足したのか、次の班へとマッハで飛んでいった。
「……次の準備だ。いこう!」
「さっき千葉くんと速水さんから狙撃場所の候補がいくつか出来たって連絡があったよ、その付近もう1回行ってみよ!」
茅野ちゃんと渚君のコンビネーションも流石というかなんというか、流れるように決まる。
皆がついていくのを後ろから見ると、私の前は神崎さんだった。
ふと思ったことを言いたくて、神崎さんの肩をつつく。
「? どうしたの?」
「神崎さん、あのね。イルカと泳ぐのは無理かもしれないけど……触るのは、きっといつか叶うよ」
なんせあの杉野が相手なんだから、神崎さんのためなら何処までも本気でデートプランを組むだろう。