第28章 沖縄旅行は海の香り
殺せんせーが文字通り飛んだ。……まあグライダーを使ってる訳なんだけど。
「お、おい…なんか一機だけ妙に速いぞ」
「垂直旋回左捻り込みとか絶対不可能なはずなんだが…」
普久間エアリゾート、とジャケットに書かれた人たちが、殺せんせーのグライダーを見て首を傾げる。
「ずりーよ殺せんせー!!」
「動力の性能が違いすぎ!!」
「ヌルフフフ、戦闘機の性能は結局のところエンジンの差です」
ここからでも聞こえるくらいの声。だいぶ騒いでるな……。
「そんで誰だよそのコスプレ!!」
「堀越、二郎です」
「それ中身の方!!」
あちらは空中でグライダー。こちらは地上で準備。私は皆が飛んでいる空を見上げて笑った。
「ご本人も飛ぶ方じゃなくて作る方!!」
「いろいろ違和感ありすぎ!!」
グライダーがさらに遠くなり、声が小さくなる。そんな皆を渚君はツッコミたいのか何なのか…そんな顔で見ていた。
「うまい事やってんな、1班の陽動」
「やるもんだね〜」
杉野君は海に浸かりながら、カルマ君が渚君に水着のチャックを閉めてもらいながら、2人は1班が飛んでいる空を見上げていた。
「ちゃんと暗殺も混ぜて…他の班に目が行かないようにしてる」
目を細めて見ると、前原はすかさず銃を出しているし、一緒にグライダーに乗っている磯貝君も余念なく周りを見渡している。
「次はうちの班に来る番だよ!! やる事やってすぐに着替えないと!!」
「おーう」
泳げない茅野ちゃん以外は潜り、現地チェックをする。夏休みに立てた計画書…アレの通り暗殺を進めるため……。
「プハッ」
「お疲れ様! 中どんな感じだった?」
「ん、大丈夫」
タオルを差し出してきた茅野ちゃんの手を有難く握りタオルを受け取る。
「にしても珍しいね、京香が暗殺に加わるのって」
「……そう、だね」
今まではほとんどと言っていいほど参加しなかった。でも、今回はみんな参加するって言うし…ここまで拒否するのも無理があるだろう。
まさか、殺せんせーを人として見てしまって暗殺出来ない…なんて言えないしね。
「まあたまにはいいかな、って思ったの」
「そ? ならいいけど」
ん? 今の言葉は茅野ちゃんじゃない。
「……なんだ、カルマ君か」
「なんだって何だよ〜、東尾さん冷たいねえ」
「別に冷たくないって!」
慌てて弁解する。