第27章 夏の一時
「殺せんせーが閉めてくれるって」
「そっか! じゃあ東尾、また明後日な!」
「うん」
木村くんは軽快なフットワークで走っていった。
一人残った教室は少し寂しいけど、律もいるし。
「律」
「何でしょう?」
律はプログラムされたとは思えない笑顔で笑った。
「……ずっと前、私の家族の写真…何も言わないで作ってくれてありがとうね」
「いえ、あの後皆さんが知った事情を私も知りましたから…」
私が親と会えないって烏間先生が言ったこと…かな?
「……私、11月位に親に会いに行こうと思うの」
「えっ…?」
少し、話したい気分だった。
「写真の顔も毎日見てるから飽きてきちゃった。ちゃんと…ちゃんと会いたい」
「…もしかして、部屋に飾って?」
私は律の言葉に対して静かに笑った。
「明日はちょっと家族関連の用事が出来そうだから…話したくなっちゃった。ごめんね律」
「……いえ、大丈夫です。ただ、1人の『AI』としては抱える物が大きいと思っただけです」
「……うん、そうね……ごめんなさい。いつか、皆に詳細を話せる日が来るかもしれない。けれど…今は黙っていてね」
「はい」
律は綺麗に笑って返事をすると、ブゥンと電源を切った。
……少し話しすぎちゃったかな。
私は暗くなった校舎を後にした。