第27章 夏の一時
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「え? 誕生日パーティ?」
私はぽかんと口を開けた。
今、私は最後のウォーミングアップのため校舎横のアスレチックにいた。
いよいよ明後日は南の島ー……皆緊張してるかと思ったらそうでもなさそうだ。
「そそ! 俺ら暗殺に向けて超頑張ってるじゃん。で、そういえば一学期誕生日の奴らちゃんと祝えなかったなって。だから学校で祝おうってなったんだよ」
私を探していたらしく、「いたいた」と言った前原は(磯貝くんには及ばないものの)爽やかに笑った。
「じゃあ前原が提案したんだね」
「まーそうだな、うん。お前は一学期?」
「ううん、私は二学期だよ」
「そうか。皆暗殺の事があるから旅行にも行ってないみたいでな、全員集まれるらしい。あと30分位だな」
その言葉に私は、ん? と頭をかしげた。
「あれ? 私メール来てないんだけど……」
「だってお前いつも訓練で来てるだろ。早めに来れば会えるかと思ってな」
その答えは間違ってない。現に暗殺アスレチックをやっている最中だった。
「……」
特に話すこともなくなり、私達は移動して玄関に座り込む。
「……一学期、色々あったねえ……」
「そうだな…」
暗くなってゆく空を見ていると、感傷的になるのは私だけなのかな……。
4月、桜が舞う中目が覚めて、暗殺教室の世界にトリップした事を悟った。
5月は確か中間テストだっけ? ショックだったな、あの点数。
6月は初めてシロと会った月だ。あの時はみんなに心配かけちゃったな……。
7月……は今だな、あとは期末テストとか。
走馬灯みたいに蘇ってくる。……縁起悪いかな、こんな言い方。
「……また、これからも暗殺教室やっていこうね、前原」
前原の方を見ないで言うと、床に置いていた手を上から手で包まれた。勿論横にいた前原にだ。驚いてそちらを向く。
前原は真剣な顔でこちらを見ていた。
「……転校でもすんのか、そんな言い方」
「し、しないよ。どうしたの前原」
「…なんか、消えそうかと思った」
夕方の今の時間は、ゆっくりと黒が濃くなって、微睡む。前原の顔がよく見えないけど、少し悲しそうだと思った。
「……消えないよ、前原。そんな事…言わないで」
転校とか、したくないと思ってる自分がいる。
この世界から、いなくなりたくない……なんて。
「ごめんな、ちょっとビビっただけだ」