第27章 夏の一時
「わ、私……あんまり積極的に殺しに行っていないんです。訓練は、頑張ってるんですけど……」
「何故だ」
何故、って言われても…!!
私は、この先をマンガで読んでて、殺せんせーが地球爆破のバケモノなんかには、見えないから……。
「……対人用訓練はしてます。ちゃんと自分の身を守れるように。私は『殺す』っていう行動に感情が追いついてないだけです」
顔を上げ、ロヴロさんを見る。
「……いい目だ」
そしてロヴロさんはフッと笑った。
そう、これは嘘じゃない。誤魔化しなんかきっと効かないと思ったの。
……でも、本当でもない。
秘密を抱えてる人は、嘘は言いたくないけど本当も言えない……壁が壁を作るみたいで、自分が窮地に追い込まれてるみたいでもある。
「これにて訓練終了!」
烏間先生の声がグラウンドに響き、その日の訓練は終わった。
―――
生徒が皆帰り、東尾さんだけが自主練で残ると言って裏山へ向かった。フリーランニングをする予定なのだろう。
俺も大きな後片付けを終え、帰ろうとした。
「ミスター烏間。ちょっと待ってくれ」
「……? ロヴロ。どうかしたか。」
俺に声をかけてきたのはロヴロだ。
「…改めて、生徒の暗殺技術のうまさに感動したよ。私の弟子にしても構わない者が何人もいる」
「本職から言われると嬉しいな」
「……その生徒の事なんだがな」
「何かあったか」
まさかロヴロに限って悪口を言われて落ち込むというものでもないだろう。ところが言われたことは予想外な事だった。
「髪が少し長めな少女、名前わかるか」
「髪が長め……? 神崎さんか? 矢田さんか?」
「髪を下ろしてて……確かEast…東、と呼ばれていたような……」
「……東? ああ、東尾さんか」
確かに格好もほぼ当てはまっている。
「彼女がどうかしたか」
「ズバリ言う。彼女は何か隠しているな」
「……!」
何故……という必要も無いか。相手は名うての暗殺者。人の心を読む訓練もある程度はしているだろう。
「目が泳ぎ、俯き、片腕をもう片腕で掴む。何かを隠したかったり、自己防衛の無意識反応だ。カラスマが知ってるとは限らないが……その様子だと知っているようだな」
「……彼女の秘密を話せと?」
彼女の秘密は最初聞いた時驚いたが…今では少し、いやかなり納得している。雰囲気、様子。