第27章 夏の一時
ピタ、と肩に合わせ、照準が合った瞬間、撃つ!
割れたかどうかは気にせず、すぐ横の風船にまた照準を合わせ撃つ。
5発を終えた頃、ロヴロさんに肩を叩かれた。
「もういい」
「え、なん……」
「全て割れている」
その言葉に銃から目を離すと、先にあった風船はすっかり無くなっていた。
「は……す、ご」
再度ロヴロさんの言葉を噛み締める。
「君は通常より大きめの銃……かつ動いているものが得意なようだな。今後はこのスキルを高めると共に止まっている物も撃てるように」
「は、はい!!!」
ロヴロさんの前だと思わずどもってしまうけど、この人の意見は素直に受け入れられるし、尊敬する。
これで終わりか、とホッとして銃の後片付けをしようと割れた風船の方に近づこうとしたとき、腕を掴まれた。
…まあロヴロさんになんだけど。
「? どうかしましたか、ロヴロさん」
「……いや……君の腕の筋肉のつき方が、少し不自然だと思ってな」
「?」
不自然ってどういう事だろう?
私のそんな表情が読み取れたのか、ロヴロさんは少し笑って説明しだした。
「暗殺者というのは、道具に頼る事も多い。
直に首を絞めれば抵抗も激しく証拠も残る。ナイフや銃、場合によっては縄や手錠などが必須だ。だからあまり筋肉はつかないのだ。つくとしても銃を持つ時に使う部分だけだったりする奴も多い。
これは職業柄の筋肉とも言えよう。スポーツ選手ならスポーツで使う筋肉だけが発達する。まあ筋肉をつけることを目的にしてる奴は満遍なくやる奴も多いから、それは否定しないのだが……」
それがどうしたんだろう?
「……単刀直入に言おう。君の腕は暗殺者の腕ではない」
……!!
「プロレスラーや柔道を嗜む者よりも筋肉はついていないが、暗殺者よりもついている。つき方的にスポーツでもなさそうだ。このクラスで君だけ、暗殺者の腕をしていない」
「……暗殺者の、腕……」
それは…私が殺しに行っていないから。
そして……
「……これではまるで、SPや…対人用訓練を受けた者の腕だ」
私が殺せんせーではなく、対人用に訓練をしているから。
私はロヴロさんの目を見れなくなった。
もちろん私の立場なんか見抜けるわけない、と思ってる。
……でもその一方で、こんなにたくさんの経験をした人ならば、分かってしまうのではないか、と……