第27章 夏の一時
「…で。肝心なのはとどめを刺す最後の射撃。正確なタイミングと精密な狙いが不可欠だが…」
ロヴロさんのそんな言葉に烏間先生は眉をひそめて言った。
「……不安か? このクラスの射撃能力は」
「いいや、逆だ」
ロヴロさんはニヤリと笑ってこのクラス一番の射撃能力を持つふたりを見た。
「とくにあの2人は素晴らしい」
横でパパンと音が鳴る。全弾命中だ。
「…そうだろう」
烏間先生も誇らしげに見るその先には。
「千葉龍之介は空間計算に長けている。遠距離射撃で並ぶ者の無いスナイパーだ。
速水凛香は手先の正確さと動体視力のバランスが良く、動く標的を仕留める事に優れたソルジャー」
こうして烏間先生の評価と、2人が撃つ様子を見ていると、この2人は本当に凄いんだと思う。
「どちらも主張が強い性格ではなく…結果で語る仕事人タイプだ」
「ふーむ、俺の教え子に欲しい位だ」
暗殺斡旋業者のロヴロさんにそこまで言わしめるなんて……!
次は少しだけ訓練形式が変わり、一つの大きな的を皆で撃つ訓練。私は2番グループ。
「他の者も良いレベルに纏まっている。短期間でよく見出し育てたものだ。
人生の大半を暗殺に費やした者として…この作戦に合格点を与えよう。
彼等なら充分に可能性がある」
ロヴロさんのその言葉が合図になったかのように、パサッと的が倒れた。
……すごいな。
第2グループの私達も素早く撃ち、あっという間に的が落ちる。
次々とグループが的を撃ち倒し、次はロヴロさんによる個人レッスン。
「狙いが安定しただろう。人によっては立て膝よりあぐらで撃つのが向いている」
「は、はい。さすが本職」
そう言ってあぐらで撃つ不破さんは確かにさっきよりも撃つ精度が上がっていた。ロヴロさんはそれを見て満足したように竹林くんの方へ向かう。
「……不破さんすごいね、まっすぐ真ん中に当たってるじゃん」
不破さんに笑顔で語りかけると、
「ええー? ロヴロさんの言う事聞いただけだけど……っていうかロヴロさんってすごくマンガっぽいよね!! さっきからチラチラ見てたんだけどあの渋い目つきとか背が地味に高い所とか結構キャラに当てはまっちゃう!」
さらりとマンガの話題になった。……不破さんは色々な意味ですごい。