第27章 夏の一時
「いいや、今回はプロは送らん」
そう言い切ったロヴロさんに皆はハテナマーク。ってか修学旅行でも暗殺者送りますって断言してたもんね、烏間先生が。
とにかく、そんな空気を感じ取ったようにロヴロさんは言葉を繋いだ。
「…というより送れんのだ。殺センセーは臭いに敏感…特に君達以外の部外者の臭いを嗅ぎ分ける。
君達の知らない所でプロの殺し屋をずいぶん送り、誰もが悉く失敗してきたが」
あの修学旅行のレッドアイさん以外にもいたのか……
「その際、プロ特有の強い殺気を臭いごと覚えられ…2回目からは教室にすら辿りつかせてもらえない。
つまり、1度使った殺し屋は2度使うのは難しい上…困った事も重なってな」
「困った事?」
クラス1スタイルよしの矢田さんが銃を抱えてそう聞いた。
「残りの手持ちで有望だった殺し屋数名が…何故か突然連絡がつかなくなった」
……!!!
これが、南の島で会う……殺し屋の人たちの事か!!
「という訳で、今現在斡旋できる暗殺者は0だ。慣れ親しんだ君達に殺してもらうのが一番だろう」
いやー、知ってる人に殺されるって私だったら死ぬにも死にきれない……知らない人に殺されても嫌だけど。っていうか死にたくないけどね!!
ロヴロさんはそんな言葉で締め括り、訓練を再開した。
パンッと風船を割る音が響いた。
私たちのすぐ後ろでロヴロさんが作戦を細かく聞いている。
「先に約束の7本の触手を破壊し、間髪入れずクラス全員で攻撃して奴を仕留める。
それはわかるが、この一番最初の『精神攻撃』というのは何だ?」
「まず動揺させて動きを落とすんです。殺気を伴わない攻撃には…殺せんせーもろいとこあるから」
渚君の説明に前原くんも続く。
「この前さ、殺せんせーエロ本拾い読みしてたんスよ。『クラスの皆さんには絶対に内緒ですよ』…ってアイス1本配られたけど。今どきアイスで口止めできるわけねーだろ!! クラス全員でさんざんにいびってやるぜ!!」
寺坂グループと共に表情が黒い……。
「他にもゆするネタはいくつか確保してますから。まずはこれを使って追いこみます」
「残酷な暗殺法だ」
ロヴロさんの顔にも縦線が入る程度には皆考えてるみたい。
私も手元にある女子用の小さい銃を連続で撃つ。
3分の2。千葉くんと速水さんの訓練の効果が少しだけ出てきたかな?