第26章 トップ、浅野学秀の考え
「……!」
……なんて事だ。東尾京香は、僕が知っている事を……無意識に見抜いていた。
「理事長から聞くか、何か資料を盗み見たか、浅野君が問い詰めたか…どれでもいいけど…私はE組だけど、転校生で、孤児で…弱点まみれだったんじゃない? だから変な質問もして頭に残るようにして、あんなに近づいたんじゃないの……?」
……彼女はE組だ。
でもとんでもなく頭が回る……!
僕は観念して最低限の事は伝えようと思った。
「……変な質問は、わざとじゃない」
愛人、ではなくて贔屓されてるのかどうか聞いた方が良かったか。今更あの時の僕を恥じる。
「……言っとくけど、孤児って事が秘密なんじゃ……ないよ」
「え」
…なら父はやはり…秘密を知らないって事だ。
「……私は…確かに親に会えないし、E組だし、転校生だけど……浅野君が思うような孤独なやつじゃないよ」
「……」
…僕は、父に嵌められたのか?
私も知らない秘密を探れ、と。一見弱点まみれの彼女が実は強い事も知ってたんじゃないか……?
「E組で私は楽しくやってるし、秘密を簡単に言えるやつでもないよ。もし知りたいなら…自分で調べて。理事長なんかに、頼らないで」
「…もとよりそのつもりだ」
急に自分が情けなくなった。
父にも操られ、同級生なはずの彼女には諭され、僕はこんなガキだったのか……?
父への怒りと、弱かったはずのE組に負けた自分と、気づけば強くなってたE組…。
……今のままでは、トップから陥落する!!!
僕は初めてそれを思い知った。
「話は終わり? じゃあ帰ろうかな」
「待て」
思わず口から出ていた言葉。
「……連絡先、交換しておこう」
彼女はぽかんと口を開けた。
「い、いいけど……いいの? 私馬鹿だよ」
今まで連絡先なんて家族と五英傑の4人、A組の奴しか交換したことなかったが……
「君が50位以内だったのは知っている」
E組の事も知りたいが……彼女のことも知りたい。それは事実だ。
「…いいよ、交換しよう」
しばらく無言でスマホを弄り、連絡先を交換した。
「じゃあね、浅野君」
そう呼ぶ彼女に、僕は違和感を覚えた。
E組のほかの奴らも大体は呼び捨てなのに、何故彼女だけ君付けなんだ……?
何か、一線を引かれた様な気がして、僕はまたも口走っていた。