第26章 トップ、浅野学秀の考え
「……京香。僕の名前は学秀だ」
京香はしばらく顔を百面相の様に変化させた。
「……浅野君って榊原蓮の事何て呼んでる?」
「? 蓮だが……」
それを聞いた彼女は、少しホッとしたかのような表情で、
「わかったよ、学秀。宜しくね」
と笑った。
……何故だ。
彼女の顔を見ていると、少し恥ずかしくなる。
僕は思わず鼻を鳴らした。
彼女がE組の元へ去っていく。
僕はその儚い後ろ姿を黙って見ていた。
その後A組のクラスへ行った。
僕が教室に入るとクラスが少しシンとする。しかしまたガヤガヤとうるさくなった。
僕は自分の席につき、今回の敗因について考えていた。
……E組を、甘く見すぎていた様だ。次に戦う時は必ず……この僕の手で。
「…ま、あんなシケた国内旅行くれてやるよ。あれ毎年半分も参加してないらしいぜ。余裕無い奴は夏休み中勉強してるし」
「余裕ある奴は俺等みたく海外旅行行っちまうしな」
「うち今年ヨーロッパ一周、ヒヒヒヒヒ」
僕がそう考えている間に、どうやら五英傑の残りの4人が何か言ったらしい。教室が大騒ぎになっていた。
「皆が皆海外行けると思うなよ!!」
「あ、いや…」
「肝心な勝負に勝てなくて何が五英傑よ、お笑いだわ!!」
「勝ててるの浅野君1人じゃない!!」
……ああ、頭が痛い。
「黙ってくれないかな」
僕の一言で教室が静まり返った。
「負け犬に口無しだ。次に僕がリードを引くまでお座りしてろ」
……この借りは、必ず返す。父より先にまずE組。ターゲットはおまえらだ。
しかし…京香。
喋れば喋るほど彼女の存在が分からなくなってくる。彼女は弱いものだと思っていたが、そうでもない。むしろ強い。
でも折れそうなほど弱い瞬間がたまにある。
……彼女は一体、何者なんだ……?
『理事長なんかに……頼らないで』
さっきの彼女の言葉がよみがえる。
……僕個人で京香に近づき、調べろってことか。
面白い、やってやろう。
ついでにE組の秘密を暴いてやる……!
―――
浅野君の目的がE組から東尾京香にすり変わっている事に浅野君自身が気がつくのは、いつになるのだろうかー……?