第26章 トップ、浅野学秀の考え
次に東尾京香と会ったのは、終業式の日だった。
E組が僕等に勝った条件として出してきたのは、A組が行くはずだった沖縄リゾート2泊3日だ。
……腹が立つ。おまけにE組の秘密も全く掴めていないままだ。
E組は主に寺坂と磯貝が話をまとめてきたが、僕は東尾京香の方にも目をやった。E組のメンバーを微笑ましそうに眺めている。
……丁度いい。あとできちんと聞いてやろう。E組の秘密を。
A組がE組に負けるという屈辱の感情をどこに当てるか迷っていた僕は、その醜い感情を表に出さない為にも今はE組の秘密について調べる事にした。…その為には、弱い所からなし崩しにしなければ。
終業式が終わり、校舎への帰りがけ。
東尾京香に声をかけた。彼女に声をかけるのは2度目だ。
適当にこの前の非礼を謝り、僕は本題へと話を進めた。
「僕はE組には秘密があると思ってる。君はE組の転校生だから第三者的に見れるだろう。どうなんだ」
彼女はその質問を聞くと顔を少し曇らせた。
「……E組の、秘密かあ……」
小さな石ころを蹴っ飛ばし、軽く下を向く。僕の元へ石ころは飛んできたが、流石に蹴ろうとは思わなかった。
「E組に秘密は…ないよ」
彼女が僕を真っ直ぐ見つめる。僕は久しぶりにこんな強い瞳に見つめられたことを思い出した。
しかしそんな瞳を持っていても、E組に関しては何も言えないらしい。
「もしあったとしても……私には言えない」
「…君も黙るのか。父もそうだった」
少し苛立つ。何故A組のトップである僕が聞いているのに誰も答えてはくれないのか?
もう話を終わりにして帰ろうと思い、そっぽを向いた所、彼女の小さい呟きが微かに聞こえた。
「……私は、もうこれ以上秘密を抱えられないから……」
秘密を、抱えられない……?
「どういう事だ、それは」
彼女は少し迷った様に目をキョロキョロさせた後、息を一つついて切り出した。
「…E組の秘密は…ないけど。でも私に秘密はあるよ。断言出来る」
E組の秘密ではなく、彼女の…秘密。
孤児ということではないのか?
「それは…まあ言えないんだろうな。秘密だろうし」
僕のその言葉に、彼女はまた強い瞳を僕にぶつけてきた。
「……浅野君さ。私が孤児なの知ってるでしょ」