第25章 期末テストは個人戦!?
つまりE組に負けた人が半分以上いたって事だ。
エンドのE組は、少しずつ変化している。
それは熱を持った鎖のように。それはとどまることを知らない雲のように。
それは……いいことだと思う。
私は遠くで焦っている髪の毛の少ない校長を少しだけ微笑んで眺めた。
―――
集会も終わり、体育館から渡り廊下の外に出る。暑さに項垂れながら玄関から出て帰ろうとした時。
「待て。E組の東尾京香」
……はい!!?
E組のみんなといたから一緒に振り返る。
「……浅野君? 何か用……」
「聞きたいことがある。ついてこい」
特に何も言わず校舎の中に入ろうとする浅野君に、今度は私がストップをかけた。
「ちょ、待って待って、私用事ないと校舎の中入れないよ。E組だもん」
「……そうだったな、じゃあ外でいい。校舎裏の自販機、あそこだ。ついてこい」
浅野君の顔はいつもと変わらない。……一体新入りの私に何を聞くつもりなんだろう?
皆に一旦断って、早歩きの浅野君に大急ぎでついていく。校舎裏は案外近く、私はついでとばかりに自販機で緑茶を買った。
「……この間はすまなかったな」
「ふぉ?」
ペットボトルの口を咥えながら言ったので妙な声になった。口からペットボトルを外し、聞き返す。
「え、何を謝ってるの?」
「……理事長の愛人だとか変な質問して、だよ」
「……ああ、あれね!」
浅野君はブスっとした顔だ。でも前みたいに疲れてはないみたい。
「浅野君あの時疲れてたでしょ? きっと頑張ってる私達のクラスと同じか……それ以上勉強してたはずだよ」
「トップなら当たり前だ」
うーん、当たり前の事を当たり前に出来るのはいいと思うんだけど……
「勉強は大切だけど、あんなぶっ飛んだ質問する位疲れてたんなら、よく休みなよ……ってもう休んだ後か」
「僕はついでに聞きたいことがあるんだけど」
とりあえず謝りたかっただけのようで、話は次へと進む。私も別に聞かない気はなかったので黙って浅野君の話を促した。
「僕はE組には秘密があると思ってる。君はE組の転校生だから第三者的に見れるだろう。どうなんだ」
それを聞きたかったのか、謝りたかったのか、どっちが上だったんだろう?
「……E組の、秘密かあ……」
私は手近にあった石ころを軽く蹴飛ばした。