第25章 期末テストは個人戦!?
そもそも、と前置きして理事長は私達もよく使うネットサイトで検索をかけ始めた。
パシッとエンターキーを押し、またこちらに画面が向く。
「市立美波桜中学という中学校は……ない」
検索履歴に引っかかったのは3件だけ。その3件も、全く関係ない学校だ。名前に波が入ってたり、美と桜が入ってたりするだけ。
「これは、どういう事かな」
理事長は両手でほおずえをつき、ニコリと笑った。
私はただ黙る事しか出来なかった。
「なぜ君が嘘をつく必要があるのか、私は色々考えたが、それにも全て矛盾が生じるんだ」
「う、嘘なんて……!」
途中まで言葉を言いかけたが、私は慌てて手で口を押さえた。
「……フム、嘘をついてないというのなら、なぜこの中学校は無いのかな?」
口調は柔らかいが、言葉の内容は査問の様だ。
……言えないよ。
あなたは、私の認識じゃ、前まで本の中の人だったんだよ、って。
マンガで、アニメで、コミックスで、現実の人なんかじゃ無かったんだよ。
…でも、今目の前に理事長はいる。
意志を持って動いている。
それはE組のみんなも、椚ヶ丘に住む人たちも一緒だ。
「……何も、言えません…」
私は俯いた。
「何故?」
「…国家機密だから、です…」
私はいつだったかの烏間先生の言葉を借りた。
「君だけが1人で抱える国家機密ですか?」
「私だけなんかじゃない!! 烏間先生も、イリーナ先生も、殺せんせーも……」
……信用なんかできないだろう、私のために。
尽くしてくれた。
「……とにかく、理事長。あなたには言えない。私が死ぬか、いなくなるまで……」
「…それではまるで殺せんせーのようですね」
「え?」
理事長の言った言葉は、ある種、私の度肝を抜いた。
「国家機密だし知っている人も数少ない。理由は殺されるかいなくなるまで言えない、とは。殺せんせーそのままじゃないですか」
「…!」
…………そう、かもしれない。
「…まあいいでしょう。興味はそこまで深くあった訳じゃないですから。ただ、不祥事に関わっていたのであれば学校としては困ると思って呼び出しただけなのでね」
「…………はい」
いつもならもうちょっと色々聞きたいと思うんだけど……今回は何も言えない。
「失礼しました」
踵を返し、理事長室のドアノブに手をかけた。